2024年には、ドライバーの労働環境改善のため、労働時間などの規制が強化されます。この規制強化でドライバー不足は加速すると見られており、2030年には日本全国で3万6,000人のドライバー不足になると見込まれています。
人口減少社会の中で高齢化は急速に進行しています。既に人口の4分の1を超えている65歳以上人口は、2036年には人口の3分の1に増加すると推計されており、出かける手段のない「交通弱者」は今後も増加し続けます。
交通事業者の撤退が始まっています。コロナ禍での移動ニーズ激減は、交通事業者の事業存続に大打撃を与えました。公共交通はその大多数が赤字路線となっており、減便・路線廃止の流れを食い止めることはできません。
R5国土交通白書
R4交通政策白書
R4交通政策白書
ライドシェアとは、移動の手段である車とそれを運転するドライバーをシェアリングする、新しい移動の形です。スマートフォンアプリなどで配車を依頼し、タクシーのように利用する形式が一般的なライドシェアの仕組みとなっています。
現在の公共交通は、バス、タクシーのように「専門のドライバー」が「専用の車両」を運転するケースがほとんどで、法律で多くの規制が課せられています。バス・タクシー事業の許可制や、第二種免許と呼ばれる免許制度が代表的な規制です。危機的なドライバー不足を解決するために、こうした規制を緩和してライドシェアを解禁し、ドライバーを確保すべきだという声が上がり始めているのです。
海外では、国際的なライドシェア企業であるUber社をはじめ、欧米だけでなくインドやシンガポールなどアジアでもライドシェアアプリが一般の人々に普及していますが、日本ではライドシェアは禁止されています。既存の交通事業者から、「安全性が担保できない」「仕事が奪われる」との根強い抵抗があるためです。しかし、こうした既存事業者だけでは公共交通が維持できないことは、相次ぐ交通事業者の路線廃止・撤退を見れば明らかです。公共交通が完全な機能不全になる前に、ライドシェアの解禁を含む公共交通政策の抜本的な見直しを図る必要があるのではないでしょうか。
私たちが目指していること
いつでも、どこでも、どこへでも行ける地域交通を作る
私たちは、急速な高齢化と交通事業者の撤退に苦しむ過疎地域にこそ、新しい移動の形である「過疎地ライドシェア」が必要だと考えています。過疎地の地域交通を維持するために解禁すべき「過疎地ライドシェア」は、インバウンドの復活などでタクシー不足が顕著になっている都心部や観光地におけるライドシェアの解禁とは、問題の所在や解決策が異なります。タクシー事業者の撤退が進んでいる過疎地域では、「タクシーの台数規制を緩和し、供給を増やす」ということが不可能だからです。
「過疎地ライドシェア」では、十分な運転能力はあるものの職業ドライバーになることが難しい「潜在的ドライバー」を活用します。具体例として、平日にも空き時間がある学生や、休日に副業をしたいサラリーマンなどが挙げられるでしょう。配車アプリを通じて「移動を提供できる人」と「移動したい人」をマッチングさせれば、すぐにでも過疎地ライドシェアをスタートさせることができます。
フルタイムで職業ドライバーになることが難しい地域住民の方々に、ドライバーの担い手となっていただくことが過疎地ライドシェアのポイントです。
この仕組みは、路線バスの維持に苦心している自治体にとって、公共交通を維持するための切り札になります。「過疎地ライドシェア」は既存の路線バスと異なり、決められた路線やダイヤがないため、運行台数や時間帯の柔軟な調節によって住民の方々のニーズに応えることが可能です。さらに、既存の遊休車両を最大限活用することにより、路線バス事業者の赤字補填に比べ財政負担を軽減できる可能性もあると考えられます。
このように、単純な「規制緩和」「自由化」ではなく、人口減少が続く過疎地域の公共交通を「守る」ために、自治体が中心となって運営される「公共交通」となる過疎地ライドシェアが必要なのです。
「ライドシェアは話題になっているけど、過疎地ライドシェアとは何が違うの?」と思われる方もいらっしゃると思います。 「ライドシェア」は、タクシー会社などに限定されている移動サービスを一般のドライバーに解禁して自由化する、というものをイメージすることがほとんどです。
一方、私たちが構想している「過疎地ライドシェア」とは、「バス・タクシー事業者が足りない」、「ドライバーが足りない」などの事情を抱え、十分な公共交通サービスを提供することができない地方の方々に、公共交通を届けるものです。 こうした過疎地では、公共交通を提供するための事業者や職業ドライバーを確保することは極めて困難です。
そのため私たちは、マイカー、スクールバス、公用車などの「使われていない時間がある車両」と、主夫・主婦、元気な高齢者、学生などの「運転できる時間がある人」をつなぐ過疎地ライドシェアにより、公共交通を届けたいと考えているのです。
このように「過疎地ライドシェア」は、利益を追求して収益を上げるための事業として運営するのではなく、地方自治体などの支援のもとで運営される「公共交通サービス」として解禁されるべきだと、私たちは考えています。
少子高齢化と人口減少が急速に進んでいる過疎地域では、高齢者(65歳以上人口)の比率が都市部よりも高く、40%に迫っています(全国では28%)。
高齢者の交通事故防止のために運転免許の返納などが推進されている中、自家用車の運転が難しい高齢者の方は増加していると考えられることから、高齢化が進んでいる地域ほど、交通弱者も増加していると考えられます。
人口減少が進んでいる過疎地域では、バス・タクシー事業者が十分な収益を確保できず、事業を維持することが難しくなっています。
地域住民の足となっている路線バスが廃止され、突如として公共交通の空白地帯が生じるケースも出てきているほか、タクシー事業者も過疎地域では収益を確保できず、大手事業者の撤退や地元事業者の廃業が相次いでいる状況です。
こうした問題の背景の1つに、過疎地域での高齢化や人口減少によって過疎地域のドライバーの減少・高齢化が起きていることが挙げられます。過疎地域では、高齢のドライバーが1人で切り盛りしている事業者が珍しくありません。
若い世代のドライバーを確保したくても、地域全体の若者の数が大きく減少しているため、ドライバー不足や後継者の不在による廃業が発生しているのです。
公共交通の維持のために、莫大な予算を投じている過疎地域の自治体は少なくありません。1日数人しか乗車しない路線バスの廃止に踏み切れないまま、数億円に及ぶ赤字補填を続けることが当たり前になっている自治体もあります。
路線バスは移動の目的地や時間帯が集中している場合には効率のよい交通手段ですが、過疎地域では移動ニーズがバラバラになりやすく、収益の確保が難しくなっています。
バス事業者、タクシー事業者の許可制度や、自治体・NPOなどによるボランティア運送(自家用有償旅客運送)などについて定めている法律です。
過疎地ライドシェアを浸透させるためには、ボランティア運送の運営主体の一般事業者への拡大、事業存続のために必要な最低限の運賃を柔軟に設定できる仕組みの導入、事実上必須となっている地域の交通事業者との合意という条件の緩和などが必要です。
また、最終的には、過疎地ライドシェアを新たな運送事業の1つとして位置付けることで、求められる運行管理・ドライバー管理のあり方など乗客の安全性と利便性を確保するための制度を新たに規定する必要もあります。
私たちは、現行のボランティア運送を活用した過疎地域の公共交通を模索しつつ、過疎地ライドシェアを新しい運送事業として位置付けるため、利便性と持続可能性を兼ね備えた運行地域・運賃などの設定のあり方や、安全性の確保のための車両・ドライバーの管理のあり方などについて、過疎地域の実情を踏まえて構想していきます。
事業用の自動車を運転することができる免許である第二種免許などについて定めている法律です。過疎地ライドシェアで使用される車両は事業用の自動車として取り扱わないなど、ドライバーの確保に関する側面からのサポートが必要になります。
私たちは、過疎地ライドシェアのドライバーを確保するため、道路交通法における事業用自動車の定義や、特別な免許区分の新設、ドライバーに受講させるべき講習の内容などについて構想していきます。
タクシー事業に事実上の参入規制を設けている法律です。
既存のタクシー事業者の保護と引き換えにサービスの向上を求めるものですが、新規参入の制限による既得権益の役割が大きくなっており、全国的なタクシー不足の一因となっています。
私たちは、タクシー不足・ドライバー不足の時代に対応した台数規制のあり方について構想していきます。
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